和田明美と未来を創る会

「和田明美と未来を創る会」は、これらのテーマの実現に取り組む同志を集め、ともに国の施策を変えていく、わ(和・輪)づくりを目指します

Ⅰ.安心できる居場所 社会に

 ~拘束・薬漬けの精神科病院から地域で回復へ転換~

1.精神医療

(1) 病院・医療

・精神科救急は、搬送患者の6割を強制入院(医療保護入院)にしなければ報酬が得られません。そのため必要がない患者さんまで強制入院となり、長期入院の要因になっているという医療現場からの声が多くあります→→6割規定を廃止。任意入院にして1か月ごとに退院できるかどうかチェックし安定したら退院
 病院内スタッフ、患者本人、患者の家族、地域の支援者(訪問看護師、福祉施設職員、自助グループなど社会資源のスタッフなど)、弁護士などを交えたケース会議を月1回開いて、退院できるかどうか評価・検討します。この月1回のケース会議を開かなかった場合は、診療報酬制度で病院側の減点

・向精神薬処方(入院者、刑務所収容者を含む)の最少化
 向精神薬処方は基本、同種薬単剤とし2剤以上は大幅減点。ただし、抗精神病薬は不眠への使用などに2剤併用まで短期間は容認し3剤以上は大幅減点。ベンゾジアゼピン系の睡眠薬と抗不安薬は3か月(または1か月)以上使用したら大幅減点。患者の症状をみながら減薬や断薬をしたら加算。

・身体拘束の最少化
身体拘束は、スタッフの24時間付き添いとカメラ設置を義務化。1回の最長拘束時間を規定する。それ以上、拘束すると大幅減点。身体拘束をせずに患者を落ちつかせる技術・手法を研修プログラム化し、研修は義務化

・減薬や断薬ができる医療機関を各都道府県に最低1カ所設置

・精神病院の病床削減・廃院を進め、訪問看護・ショートステイ・デイケアの小規模多機能施設や高齢者施設に転換

・アウトリーチチームや地域の福祉・回復支援施設は、国・自治体の補助金事業制に

・精神科特例を廃止して一般医療と同じ基準にする

・精神保健福祉法を改廃して、精神医療を医療法に組み入れる

・精神医療審査会の審査員構成を改編、審査迅速化

・医療観察法の処遇入院では、患者の特性に合わない治療がされているケースが少なくありません。まず、捜査機関による捜査、立件は刑事訴訟法に基づく捜査・立件と同等の証拠収集、調べ、裁判所の令状取得などを徹底。鑑定の段階では、犯罪的行為の根底にある疾患特性を判断するため、複数の専門医も含めた鑑定医らによる実質的な評価・アセスメントを義務化。クレプトマニア(窃盗症)、薬物依存症、性依存、発達障害など疾患・機能などの特性に合った専門医療機関や社会資源につなげます。

・入院中のスマートフォン自由化

・眼球使用困難症など中枢神経難病(薬剤性を含む)に障害年金

(2) 地域生活

・入所施設の地域移行

・全国の公営住宅で一人暮らしを可能に

・ピアサポーターの家事手伝いや買い物付き添い、退院促進支援などを制度化。ピアサポーター、ピアスタッフや支援職の段階的な研修プログラムを確立

・障害者の年金値上げ  精神障害の受給基準を一定にする

・全国で医療費助成を精神障害手帳2級まで拡大

・精神障害手帳所有の全員に交通運賃割引

・ともに育つインクルーシブ教育

2.司法

・刑務所に入らず専門回復支援施設につながる「日本版ドラッグ・コート」
違法薬物で逮捕された後、検察官調べの段階で、刑務所に行くか罰金を払ってダルクなどの回復支援プログラムにつながるかを選択。回復支援プログラムにつながったら、最低1年間は法務省からプログラム・入寮費などの支援を受けられるようにする。1年をめどに回復の程度を専門官にみてもらい、一定程度回復へ向かっていれば、検察官に起訴猶予としてもらう仕組み作り

・自立準備ホームの委託期間を1年まで延長

・精神科当番弁護士制度の整備

3.生きづらさを抱える人たちのために

・発達障害児を育む認知行動療法プログラムの普及

・発達障害者の更生支援プログラム・計画に国補助

・ヤングケアラー、発達障害、ひきこもりの人たちへの地域の支援連携強化

・メリデン版訪問家族支援など家族のケア支援

・安心できる居場所作り

・学校のソーシャルワーカー、スクールカウンセラーの充実・連携。スクールカウンセラーも子どもの家庭訪問を可能に

・行政の福祉専門職の正職員化

◆政策提言案の背景

安心できる居場所 社会に

隔離・拘束・薬漬けの精神科病院を地域での回復へ転換

(1) 隔離・拘束・薬漬け

 私は過去20年以上、精神科病院に入院していた人が大量の向精神薬投与や身体拘束によって重症化したり死亡したりした事案を取材してきました。2010年、その遺族や悪化した人の家族らとともに厚生労働省に行き、多剤大量処方の改善を求める陳情書を提出。診療報酬制度で同種薬3剤以上を処方すると減算される改定に結びつけました。この改定によって、向精神薬オーバードーズ(OD)による救急搬送数が大阪などで半分に減りました。また通院の人の単剤化が進み、副作用に悩む人は減っていると実感しています。
 しかし、入院の人の多剤大量処方はいまだ改善されず、強制入院や身体拘束の乱用など精神医療には根深い問題があります。
 日本弁護士連合会が2020年、精神科病院に入院経験のある1040人に行ったアンケート調査では、入院中に悲しい・つらい・悔しい体験をしたことがあると回答したのは8割。最も悲しい・つらい・悔しい体験と答えたのは、外出制限、隔離室が5割、薬の副作用、長期入院が4割、身体拘束、侮辱、面会・通信制限がそれぞれ3割でした。インタビューでは、「看護師にベッドにくくり付けられ、尿道に管を入れられオムツを着けられた。看護師に囲まれた時は恐怖を感じ、オムツは屈辱だった」「人間不信になった」など、隔離や身体拘束による屈辱、恐怖、絶望を訴えた人が極めて多い結果でした。「独房でトイレまで監視され、排泄物は流さず、食事も独房の下の方に開いた小窓から差し出されるというブタ以下の扱いを受けた」など非人道的な扱いを指摘するものも少なくなかったのです。
 筑波大名誉教授で精神科医の斎藤環氏は、多くの精神科病院で不必要な大量の向精神薬を使って患者をおとなしくさせる「薬縛」という問題があるといい、その大量の薬によって死亡することもあると述べています。また、患者の体や手足をベッドにくくり付ける身体拘束によって、深部静脈血栓症(エコノミークラス症候群)に罹患すると、肺に血栓が詰まって酸素を取り込めなくなるため、肺の広範な領域が一気に壊死して、そのショックで死亡することもあると、重篤な副作用を指摘しています。退院してもトラウマ(PTSD)症状が長年残ることがあるのも大きな問題だとしています。

 身体拘束は人口10万人あたり日本では120人に行っており、

グラフ:身体拘束を受けた人数

<杏林大学・長谷川利夫教授提供>

 

米18人、豪6人、英1・9人と比べ極端に人数が多い状況です。入院患者1人に対する拘束の平均時間でも、日本は730時間、独8・2時間、米4時間、ニュージーランド1・1時間と突出して長い時間が示されています。

グラフ:身体拘束の平均時間

杏林大学・長谷川利夫教授提供

 

(2) 長期入院で人生を奪われる

本:かごの鳥

 精神科病院に約40年もの間、入院させられていた伊藤時男さん(74)は精神的に安定し、院内の労務作業もまじめにこなしていました。しかし、複数回の退院申請は受け入れられず、2011年の東日本大震災で病院が被災したため、後に退院できることになりました。伊藤さんは「震災がなかったら、一生を病院で過ごして、そのまま最期を迎えていたと思う」と述べ、長期入院によって平穏な人生が奪われたことを訴えています。

 日本では精神科病院に5年以上入院している社会的入院の人は欧米と比較してケタ違いに多く、全入院患者数も25万525人(2024年630調査)と、世界の精神科病院入院患者数を日本が押し上げています。欧米では、精神科病院入院者数は1カ国で2万人~5万人ぐらいです。日本も欧米と同等にしたいと考えています。

 

 

 

 

(3) アウトリーチ(地域包括ケア)への転換

 病院や刑務所に閉じこめる収容型ではなく、地域で暮らしながら回復していくアウトリーチへの転換が少しずつ進んでいます。
 精神科医や看護師、臨床心理士、公認心理師、精神保健福祉士、薬剤師、作業療法士ら支援職が、患者が必要とする時に患者宅に訪問して、薬はなるべく使わず、対話によるケアをするアウトリーチチームが治療の成果をあげています。
 また、ピアサポートといって、疾患から回復したピアサポーターが同じような疾患で苦しんでいる人を支援することで、社会復帰へのお手伝いをする取り組みが数年前に始まっています。
 このような社会資源が連携して、地域社会に根付いていき、安心できる居場所を創りあげていくのが理想だと考えています。ベルギーなどの成功例を参考にして、本格的なアウトリーチへ転換するために、診療報酬制度や法的枠組みの改編を行っていきます。

絵画:ベルギー社会

ベルナルド・ジェイコブ氏来日講演資料より 人を中心にしたケアモデル

 

(4) ピアサポーターの制度化

 精神症状が安定している、または、ある程度回復したピアの方々は、近年、精神科病院から退院するための支援活動を行っています。多くのピアの方が、こういった活動を「もっと行いたい」と述べています。やる気次第で、ピアサポート活動だけで経済的に自立できるようにしたいと考えています。一方で、時々不安定になったりすることもありますので、その人の体調に合わせて無理のない範囲でピア活動に関われるように、柔軟な体制作りが望まれます。
 同じ疾患を経験した者同士は、多くを語らなくても理解し合えるという強みがあります。支援する側も、される側も、お互いの力を引き出し合っていけるようにしたいですね。
た、精神疾患のある人の自宅訪問では、介護・支援職の方に来られるとかえってストレスになって良くないという声も少なくありません。この場合、ピアならば、理解し合って友人や仲間になれるという可能性があります。家事手伝いや買い物、外出など、サポートするうちに、されるうちに、安心できる関係性ができていくということが大切だと考えています。

(5) 「日本版ドラッグコート」の実現

 違法薬物など薬物依存症の人たちは、刑務所に入っても出所したら、すぐに再使用して逮捕され再入所するということを繰り返しています。
 薬物依存症回復支援施設「ダルク」のある施設長は、「長年、刑務所に入っていると、仕事に就いて結婚して家庭を作ってということができなくなり、自分はダメな人間なんだと自信喪失してしまう。刑期を終え出所しても元犯罪者という社会の差別や偏見があり、仕事に就くことが難しく、仕事に就けたとしても元犯罪者であることがばれて解雇されることもあるのです。そうなると、ますます『ダメな自分』を忘れたくて、また薬を使ってしまうんです」と薬物依存症者の逆境を話しています。
 刑務所は、逆に社会復帰を困難にして重症化させているのが実情だと思います。刑務所に入らずに早期に回復支援プログラムにつながる「日本版ドラッグコート」を実現するために尽力します。

(6) ヤングケアラー支援

 文部科学省が行った調査では、ヤングケアラーがケアをしている相手で一番多いのは母親でおよそ4割。その母親の状態で最も多いのが、依存症を含む精神疾患で4割弱。精神的に不安定な母親との母子家庭といった場合が多く、子どもたちはネグレクトの状態にあることが多いのです。ヤングケアラーだった人たちからは「自分にとっては、これが当たり前の生活で、普通じゃなかったということが分からなかった」という声もあり、ヤングケアラーの子どもたちが、自ら周囲にSOSを出すことは極めて困難な状況にあるといえます。
 こういった状況を早めに察知して、適切な支援につなげるためには、学校や地域社会の大人たちが気がついて支援につなげられるように、地域連携を作りあげなければならないと感じています。

(7) 発達障害への支援

 発達障害の人たちは、聴覚や触覚、嗅覚が過敏だったり、人との距離感をどのように保って良いか分からないなどの特性を抱えていることが多いです。こういった特性を理解して、犯罪につながらないように育んでいく、専門的な認知行動療法プログラムや、環境作りを具体化していく必要があると思います。また、大人になって犯罪を犯した場合の治療支援プログラムも充実させたいと思います。このような専門的な支援職らへの国からの助成も強化。

(8) 行政の専門職の正職員化

 虐待を受けている子どもたちをどう助けるか、また、生きずらさを抱える人たちを理解してどう支援につなげるか判断能力のある、社会福祉士、公認心理師、精神保健福祉士といった福祉・支援職の人たちを行政機関で正職員にして、地域支援の中で決定権を持てるようにして、福祉サービスの質向上へ。

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